遠州横須賀で伝統の製法を守り、砂糖を作っている「よこすかしろ保存会」。
幸運にも刈り取りから、製糖工程までを見せていただける事になり、
興奮気味に掛川市のよこすかしろの製糖工場にやってきた、ライターきゅう。
11月下旬から12月いっぱいしか作られない貴重な「よこすかしろ」。しろした糖とも呼ばれます。
ライターいなが刈り取ったサトウキビは、ココに運ばれて、砂糖になるんですね。
サトウキビの汁から作った砂糖は甘藷糖(かんしょとう)と言います
サトウキビというと、沖縄や四国のイメージ。ここ横須賀で砂糖作りがなぜ始まったのかを聞いてみました。
寛政2年(1790年)、横須賀藩の家老武士の二男であった潮田信助(うしおだのぶすけ)が、
以前から興味のあった製糖技術を知るため身分を隠し四国へ渡り、百姓の手伝いをしながら技術を学んだそうです。
そして密かにサトウキビの苗を持ち帰り、
横須賀地区にサトウキビと製糖技術を伝えたのが始まりと言われています。
大正時代までは盛んにサトウキビ栽培が行われていたそうです。
「よこすかしろ保存会」は伝統の製法で途絶えたよこすかしろを作り続けています。
工場に入ろうとすると、横須賀地区で栽培され刈り取られたサトウキビが次々と運び込まれてきました。
1m程に切られたサトウキビ。刈り取りに同行した時かじってみましたが、竹のように硬かった~。
このサトウキビから砂糖が作られているなんて不思議です。
まずはローラーに通して繊維を潰しながら、サトウキビの汁を搾汁していきます。
サトウキビ100キログラムで50リットルの汁が採れます。約半分になってしまうのです。
昔は牛が臼を挽いて、搾汁していたそう。
サトウキビの搾りかすは、掛川市内のお茶農家の方が買い取って、茶草の様に敷草にするそうです。
捨てるところがないなんてスゴイですね。
180リットル程を釜に入れ、煮詰めてアクを取っていきます。
搾り汁はすぐに酸化してしまうため、搾ったらすぐに製糖作業に移ります。
また、サトウキビも刈り取った翌日までには搾汁しないと品質が落ち、良い砂糖にならないため、
刈り取りの量も調整しなければいけません。
絞り汁を沸かして、煮詰めながら丁寧に柄杓(ひしゃく)でアクをすくい取ります。
大体取り除いたら、石灰を入れ混ぜ、湧いてきた黒いアクを取り除きます。
ここで手を抜くと渋みが残り、よこすかしろの味が違ってきてしまうのです。
あうんの呼吸で作業を続ける3人。お話を聞くと、皆さん気心の知れた仲間なのだそうです。
灰汁を大体取り終わったら、釜から移して静かに1時間ほど置き、残っている灰汁を沈めます。
この状態の汁を「ふっきり」と呼ぶそうです。
「ふっきり、飲んでみる?ここに来なきゃ飲めないよ。」とのお言葉。
「もちろん飲みます!」
自然な甘みとサトウキビの旨味。そしてちょっと香ばしい。なんて美味しいんだろう!
この旨味が凝縮された「よこすかしろ」の出来上がりが待ち遠しい~。
さあ作業続行です。ふっきりの上澄みだけを煮詰め、段々キャラメル色になってきました。
火の止めどころは、温度と砂糖の状態で判断します。
製糖作業のマニュアルはなく、目で見て覚えていったそうです。
陶の容器に移し、その直後から竹の棒でクルクル回しながら撹拌。
先ほど搾汁作業をしていた後藤さん(上写真)が手際良く回します。
冷ましながら中に空気を含ませ、砂糖の結晶を作るのだそうです。
人によって回し方が違うので、3つある入れ物を順々に回って均一に撹拌するんですよ。
軽々回しているようですが意外と重いのです。
見た目はキャラメルのよう。バットに流し入れ、自然乾燥します。15分位で 固まってきます。
少しやわらかいうちに切り込みを入れておき、ある程度固まったら裏返してまた乾燥させます。
袋詰の時にもう少し細かく崩して製品として完成です。
製品になるのはサトウキビの量の6、7%。本当に貴重な砂糖なんです!
サトウキビの旨味がたっぷり詰まって、甘いのにしつこくない 。
料理にみりんや砂糖の代わりに使うと、抜群の美味しさになるそうですよ!
でもこのまま食べるのもいいかも。何だか一気に元気がみなぎってきます。
コーヒーに入れても美味しいかも…など、作業中にも皆さんでよこすかしろの新たな使い方を考えていましたよ。
「よこすかしろ保存会」の皆さんは、真剣な作業の中でも時に和気あいあいでチームワークはばっちり。
手間暇かけ、愛情たっぷりに作られる「よこすかしろ」の味は、
伝統の砂糖を守る人たちの人柄も反映されているような味でした。
※この記事は2013年1月に公開しました
『よこすかしろ保存会』
所在地:掛川市西大渕63(大須賀町商工会内)
TEL:0537-48-2262 ※購入についてはこちらにお問い合わせ下さい