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世界に誇る技術を持つマウスピース職人!

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夏バテを引きずっているわりには、食欲の秋真っ盛り。秋の美味しい「食」もいいですが、
コンサートなどで素敵な音楽を鑑賞したくなる今日この頃。

私ライターきゅう、初取材で伺った「金管楽器工房永井」さんから
「トランペットのマウスピースを作っているスゴイ人がいる!」との情報が。
早速、浜松市中区、JR東海道線「浜松駅」南口から徒歩5分ほどの場所にある、
Toshi’s Trumpet Atelier』へやってきました。

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Toshi’s Trumpet Atelierの代表・亀山敏昭さん

入り口の鉄製の看板は亀山さんが手作りしたもの。トランペットのデザインが素敵です。

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矢印の部分がマウスピース(上写真)

マウスピースとは管楽器の口をあて息を吹き込む部分の製品のことです。
唇を軽く合わせて息を吹き出した時、上下の唇の隙間で起こる振動を本体の管部に伝達する役割があります。
亀山さんはこのマウスピースを制作する職人さんです。

亀山さんは高校卒業後、ヤマハ吹奏楽団に入るためヤマハに就職。
20代の頃はイギリスに輸出するコルネット(トランペットと管長は同じだが管の巻きが多い小型の楽器)の
デザイン開発に携わっていました。

30代には技術者としてドイツに渡り『ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団』や
『ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団』などのヨーロッパの著名な演奏家にコンタクトを取り、
ヤマハのトランペットを紹介したり、意見を聞いて商品開発に役立てるという仕事をしていました。

仕事をする中で、演奏家たちが「トランペットのマウスピースの不具合で困っている」と言うのを聞き、
演奏家の話を聞きながらマウスピースに手を加え、それぞれの悩みを解消するサポートを始めました。

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親交のあった、故モーリス・アンドレ氏の本

そうしているうちに、フランスの有名なトランペット奏者(上写真)から制作依頼がありました。
亀山さんが制作したマウスピースに世界のトッププレイヤー、モーリス・アンドレ氏が喜んでくれ、
亀山さん自身もそのことが嬉しくて、マウスピース制作の仕事が病みつきになっていったそうです。

その後はヨーロッパ各地からも噂を聞きつけたトランペット奏者たちから依頼がくるように。

50代目前で「自分のやりたい事を続けよう(マウスピース制作)」と、早期退職制度を使い、独立。
最初はヤマハという会社を離れて、自分個人に仕事の依頼がくるのだろうかと多少不安もあったそうです。

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マウスピースの型

どんな風に制作されるのだろう?使った事はあるものの、作り方は知りません。
もちろん制作現場も見せていただきましたよ!

1つの例として、上記写真の型を元に作ります。写真では外側の形状しか見えていませんが、
マウスピース上部のカップ大きさや深さ、唇に当たるリムの形状、楽器の管に挿入する部分の穴の組み合わせで
音が変わってくるそう。依頼者の要求している音色に近づくよう、これらを組み合わせて制作します。
繊細で緻密な作業です。
マウスピース
マウスピースの断面は…

高校時代、使ってはいたものの、マウスピースの中がこんな形になっていたとは!
息を吹き込んだ先に狭まっているスロートという部分から、楽器本体へとつながる部分に向けて、
除々に広がっているということも初めて知りました。

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削ったり磨く前はこんな色

何だかクレヨンみたいですが、制作は大まかにマウスピースの形になっている真鍮の素材(上記写真)から、
外側と中側を削りだして作ります。

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みるみる削られていきます

管に挿入する側とカップ側から穴を開け、バックボアと呼ばれる息を通す管を開けます。

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カップを削ります

元となるマウスピースの型をなぞると、連動して動く刃があり、制作する真鍮の素材にその動く刃をあて、
カップの中を削っていきます。ほんの少しずつ削って、形が出来ていきます。
何度も刃の位置を微調整しながら繊細に削る作業。声がかけられません。

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削りたてホヤホヤのマウスピース

まだ未完成ですが、ここから微調整を続けます。トッププレーヤーは削り具合をとても敏感に感じ取るそう。
カップの削りが浅ければ明るい張りのある音、深ければ豊かな広がりのある音。
スロートの太さの違いで抵抗が変わり、吹奏感(吹いたときの感触)や音色も変わります。

依頼者の要求に近づけたい。でも人間が行う作業。どこで折り合いをつけるかが難しいところなのです。

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丁寧に調整中

トランペットに限り、ヘコみを直したり、ピストンの調整等も行います。

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プレーヤー気分!

楽器をお借りし、飾られている美しい姿の天使の絵を真似て。
この世のものとは思えない素敵な音色が…。皆さんにお聴かせ出来ず、本当に残念。(ウソです)

「もう少しこっちを向いた方がいいよ~」と、亀山カメラマン。ばっちり撮っていただきました。
腹式呼吸が基本の管楽器。やはり、体作りから始めないといけないようです。
1オクターブも音が出ないし、腹筋がピクピクしています。あぁ情けない。

高校時代に戻って、練習したくなってきたぞ!マウスピースだけで音を出す練習(初心者の基本?!)をしなきゃ。

SANYO DIGITAL CAMERA
どんなポーズがいいかな?長~いトランペットは亀山さんの手作り

「30年以上この仕事をやって何万本とマウスピースを手がけていますが、2つとして同じものは出来ない。」
「いくらやってもマスターはしない。いつも苦労して悩んで作ってます。」と、亀山さん。
今は1ヶ月で40本から50本のマウスピースの制作をしているそうです。スゴイですね。

ご自身は「浜松ブラスバンド」に所属し、演奏者としても第一線で活躍中。
海外の演奏者とのつながりもある亀山さん。
そのネットワークを使って海外のアーティストを呼んで演奏会を行ったり、仲間と共に演奏会を開いたり。

音楽活動を通じて、ヤマハ時代から築いてきた演奏者とのつながりや技術を、
地元に還元していくことが今後の目標だそう。

取材に伺った翌日も地元の子ども達を対象とした、アトリエの見学会を催すとの事でした。

1日吹かないだけで口の感覚が変わるトランペット。毎日の練習は必須。
その敏感な感覚を元に「依頼者になりきって」個性や癖を把握し、マウスピースを仕上げるのです。
やはり吹く方も現役でなければいけないのですね。

 

 

 

※この記事は2013年9月に公開しました

Toshi’s Trumpet Atelier 
所在地:浜松市中区砂山町362-23

大きな地図で見る
TEL:053-458-4143
URL:http://www.toshi-tp.com/

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